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相続したくない土地や建物など「負動産」の売却・買取方法とは?

本コラムでわかること

本コラムでは、持っていてもマイナスにしかならない「負動産」を相続してしまった場合、処分するためにどのような選択肢があるかを紹介しています。

従来の選択肢に加え、昨今始まった新しい制度や、インターネットを活用した負動産の処分方法がわかります。

 そもそも相続によって発生する負動産とは?

負動産とは、「持っているだけでマイナスになる不動産」のことです。

親や親戚からの相続により負動産を相続してしまった場合、まったく利益を生むことがないばかりか、そのまま保有していても固定資産税や都市計画税など、税金だけが課されます。

さらに、負動産を空き家として放置していれば、老朽化した建物が近隣住民に迷惑をかけ、損害が生じれば賠償責任を負うことになります。また、管理不十分と判断されると、特定空き家に認定され、固定資産税の軽減措置を受けられず、多大な負担がのしかかってきます。

区分マンションの場合であっても、管理費や修繕積立費といった経費がかさんでいきますし、一戸建ててであれば周囲の除草や屋根の葺き替えなどの費用がかかります。

また、相続人が複数人いる場合、負動産の管理に費用や時間を充てたいと感じる者はいません。誰がお金を出すのか、誰が管理するのかといったトラブルも引き起こします。

まさに売れもせず、所有しているだけでマイナスにしかならない「負動産」というわけです。

従来の相続した負動産への対応方法

従来の相続した負動産への対応方法は、主に以下の2つでした。

①相続放棄する
②我慢して相続する

それぞれ詳しくご説明します。

従来の選択肢相続放棄する

負動産を相続したくない場合、従来は相続放棄するという選択肢がありました。

相続放棄とは、遺産の相続権を一切放棄することです。一見すると、負担にしかならない負動産を相続しなくて済むため、良い対応方法のようにも感じます。しかし、相続放棄の対象となるのは、自身が相続権を持っている遺産のすべてです。負動産だけを相続放棄することはできず、相続放棄するのであれば、すべての財産の相続権を失うことになります。たとえば、負動産以外に預貯金や株券が遺産に含まれていたとしても、相続することができません。

また、仮に相続放棄したとしても、他の同順位の相続人に負担が行くだけですし、同順位の相続人が全員相続放棄した場合でも、次順位の相続人に負担が行くことになります。

まるで、相続人同士で負動産の負担を押し付け合っている構図になるばかりか、全員が相続放棄手続きを取らない限り、負動産問題が解決することはありません。

さらには、全員が相続放棄したとしても不動産の保存義務が残るため、管理自体は継続しなければなりません。それを免れるためには、負動産を代わって清算してくれる「相続財産清算人」を選任させなければならないと、ひたすら時間も手間もかかっていました。

従来の選択肢我慢して相続する

相続放棄が難しい場合、負動産は我慢して相続するしかありません。

しかし、負動産を相続することで様々な負担を被ることになります。たとえば、前述したような固定資産税や都市計画税を負担しなければならない点や、近隣住民、そして相続人同士でトラブルを引き起こすきっかけになってしまうという点です。

我慢して相続したところで、いずれは不必要となるのは目に見えています。それすら我慢して所有を続けた場合、ご自身が亡くなった後に、今度は配偶者や子どもに負動産を押し付けることになってしまいます。となれば、どれだけ配偶者や子どもに資産を残したいと考えていても負動産の存在がネックとなってしまい、「相続放棄をするか」、「我慢して相続するか」というご自身がした二択を、今度はご自身の相続人に対しても強いることになっていたのです。このように、従来の相続した負動産への対応方法は、いずれも簡単には負担を免れない現実があったのです。誰も幸せにならない相続とは、まさにこのことです。

相続土地国庫帰属制度や不動産会社による買取が可能に!

以上が従来の相続した不動産の対応方法でした。

しかし、これからは新たな制度の登場により、以下の選択肢が増えることになります。

①相続土地国庫帰属制度
②不動産会社に買い取ってもらう

それぞれ詳しくご説明します。

これからの選択肢相続土地国庫帰属制度

今年(令和5年)の4月から、新たに「相続土地国庫帰属制度」という新制度がスタートしました。相続土地国庫帰属制度とは、相続してしまったいらない不動産を手放したいとき、国が引き取ってくれるという制度です。引き取ってくれるのが国であるため、買主を探す必要は一切ありません。また、引き取り後は国有地になるため、不動産の保存義務が課されることはありませんし、その後のトラブルを引き起こす心配がなくなるメリットがあります。

ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するには、いくつかのハードルを越えなければなりません。

1つ目のハードルが、国の審査に通らなければならないことです。相続土地国庫帰属制度は、すべての土地が利用対象になっているわけではありません。建物が立っている場合は更地にしないといけないなど、細かな条件が指定されています。

そして、2つ目のハードルは費用がかかってしまうという点です。土地の面積や地目などによっても異なりますが、原則として20万円は納付しなければならないといったデメリットがあります。

とはいえ、所有していてもマイナスにしかならない負動産を手放せるのであれば、多少の手間や費用がかかるのは致し方ないと考えたほうが賢明と言えるでしょう。

 

これからの選択肢不動産会社や個人に引き取ってもらう

負動産を相続した際のこれからの選択肢として、不動産会社に引き取ってもらうという選択肢も出てきました。昨今においては、山林や原野、別荘地等を中心として、不必要な不動産を有料ではあるものの、引き取ってくれる不動産会社が増えてきました。

不動産会社による負動産の引き取りサービスは、土地を手放す側が引き取り料や処分料を支払うという点が特徴です。不動産を買い取ってもらうのではなく、こちらが費用を支払うことで負動産を引き取ってもらう、という仕組みになっています。

ただし、農地は対象外になっていたり、中には詐欺的業者も多くいたりするため、利用の際は信用できる業者か慎重に判断しなければならないといったデメリットもあります。

また、昨今ではインターネットを利用して、個人の引き取り手を探すという選択肢も出てきました。過疎地域によっては不動産業者自体ないこともありますが、個人の引き取り手を探すのであれば、不動産業者を探す必要などありません。中には、1円にもならないと思っていた土地が、〇万円で売れたといった嬉しい声もインターネット上には溢れています。

 

まとめ

これまで、相続しても所有しているだけでマイナスにしかならない負動産を処分するのは簡単ではありませんでした。相続放棄するのであれば、他の遺産まで相続できなくなりますし、我慢して相続しても様々なトラブルの引き金になるばかりか、ご自身の相続人にまで負の遺産を押し付けることになっていたのです。

しかし、令和54月から始まった「相続土地国庫帰属制度」や、昨今の不動産会社による不要土地の引き取りサービス、インターネットを活用した個人への引き取り依頼など、負動産を処分する選択肢が増えてきています。

ご自身にあった方法で、相続してしまった負動産の負担から免れましょう。

 
この記事の執筆者
吉田研三司法書士事務所 代表 吉田研三
保有資格司法書士、家族信託専門士、相続アドバイザー認定会員、その他
専門分野相続・生前対策
経歴司法書士事務所を経営していた父(吉田雄三司法書士事務所)の病死をきっかけに司法書士を目指す。 司法書士試験に合格した翌年に、先代の吉田雄三司法書士事務所と同所にて吉田研三司法書士事務所開業。
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